久しぶりに古舘伊知郎の声を聴いた話。

最近、興味のままに舞台を観に行くことが増えました。

観劇・鑑賞あるあるですが、劇場に入るときに関連するチラシをたくさん頂きます。
開演までの時間にぼんやり眺めて、自分の食指が動くものを探します。

そんな時に見つけたのが、古舘伊知郎の「トーキングブルース」というイベントでした。

古舘伊知郎トーキングブルース:https://talkingblues.jp/

芸能人を覚えていない僕は「報道ステーションの人だったなぁ」ぐらいの記憶。

むしろ、ニュースステーションでビール飲んでた人(久米宏)と、
「ジャストミート!」でおなじみの人(福澤朗) と記憶違いを起こすぐらいの不勉強。

ただ、日頃からの「しゃべりが上手くなりたいなぁ」という願望と、
「アナウンサーのトークライブってどんな話をするのだろう」という興味が湧いたので行ってみることにしました。

会場は”Zepp Nanba”
劇場ではなく、ライブ会場でした。
まさか初・Zeppがトークライブになるとは。

会場の入り口。チケットとドリンク代(600円)が必要でした。

客層は平均50歳くらいの感じ。
若い人もちらほらいました。

ライブ会場なので、着席の前にドリンクを引き換えに行きます。
お酒もあったので「600円払ったなら…」と貧乏性でアルコールの列に並びます。

酒飲みながら人の話を聞けるだなんて、
「話し手に失礼だけど、乙なものだなぁ」なんてイキってたのですが、

ジンを選んでるのもイキり感が出てます。

ライブ会場って、開栓して渡されるんですね。

座席には映画館みたいなドリンクホルダーなんてありません。
足元に置いておくこともできると思いますが、今日は大きなリュックで来たのでそれも無理。

なので、開演までに飲み切ることがほぼ必須になります。
開演まで残り10分で、一気飲みする羽目になりました。
人の話を片手間に聞こうとした罰ですね…

ステージに目を向けると、天井から白いスポットライトが差しています。

背の高いバーテーブルに、水が1本だけ。
椅子もプロジェクターもなく、一筋の光だけが照らすステージに、妙に冷たい印象を受けます。

しばらくすると客席が真っ暗になり、古舘伊知郎が登壇しました。

これがたとえば落語だと、まず前座がやってきて、
会場の様子をうかがいながら「場を温める」ようにマクラを話されるのですが、

古舘伊知郎は「競馬の出走ゲートが開く音」のような衝撃をもって口火を切りました。

「突然にやってきた壇上のおじさんが、普通語で立て板に水のように話し出す」

その勢いと、乱暴さ。
アナウンサー時の丁寧語ではありません。
その始まり方に僕は正直、“つんのめりそう” になりました。

だけどそれは「飾らないありのままさ」を表現しているのだと、聴くにつれて感じられます。

自身の「新幹線のホームで転んだ話」を皮切りに、
現代人が「インパクト中毒」になっている話。
オールドメディア・ニューメディアという語。

昨今の排斥思考と想像力の欠如について。
持続可能な(ビジネス)社会とは。
自己肯定感という麻酔。

様々なトピックを、芸能人との思い出話を絡めたり、
まるで実況中継のようなテクニックでまくし立てたりしながら語り続けます。

喋って、しゃべって、幕間(途中休み)もなく約2時間。
そして最後まで、壇上の水には口を付けず、語り切られました。

古舘伊知郎は自身の芸を「邪道」と表現されていましたが、
僕は漠然と、上岡龍太郎の語りと似た雰囲気を感じたように思います。

僕は終始「ほえー」と圧倒されてました。
話を聴きながら、頭の片隅でずっとあることが明滅します。

「トイレに行きたい…」
お酒を一気飲みしたので尿意が近いのです。

古舘伊知郎も70代と歳を重ねられているので、幕間があるだろうと思ってました。

が、ほんとに休みなく話し続けられるのです。
僕の膀胱の方が弱音を吐いてます。

膀胱はトイレ! と叫びますが、
しかし脳は語りに集中し続けます。

何かの主義が強いわけでもなく、
偏った思想を押し付けるわけでもなく、
「俺は語るから、自分で考えろ」って言われている感覚。

その知的好奇心で、2時間ずっと聴けたような気がします。

公演が終わって、トイレに行って。
すぐに近くの喫茶店に行って、感じたことをメモに取ります。

尿意に負けかけた ”ゆるゆる脳” は、2時間の内容をきっと正しく掴めてないでしょうけども、
それでもメモがびっしり埋まるくらいには書いているので、きっと勉強になったとだと思います。

何かを鑑賞して「左脳を使ったなー」って印象は初めてだったので、とても面白い経験になりました。

さて、大きなリュックを背負って喫茶店を出ます。
このまま家には帰りません。

次は、博多 ― 富山へ弾丸旅行にいってきます!