オーストラリアは飲酒運転できる!?

しょーいちです。

タスマニア旅行中、よくワイナリーや蒸留所を訪れて、テイスティングをさせてもらいました。
試飲させてもらうと、グラスにそこそこ入れてもらえます。
僕はお酒が弱いので、唇を湿らせる程度にしか飲みませんでしたが、外国の方はガンガン飲んでました。

しかし、一人旅なので運転しなければなりません。
タスマニアはバスも電車も通ってない場所が多いので、車の運転は必須です。
これって、飲んでも大丈夫なのでしょうか。

答えは簡単。

一定量までの飲酒では、罰則がない。

今回は、この理由についてまとめます。

この記事はオーストラリア(タスマニア)の法律から、飲酒をして運転ができるかどうかを調べたものであり、決して推奨するものではありません。
法律についても素人調べですので、あくまで自己責任でお願いいたします。

さて、インターネットで検索をすると、「飲酒運転できるよ!」という情報は見かけるのですが、根拠が見当たりません。
まずは、オーストラリアの法律の仕組みから見てみます。

まず、「オーストラリアの道路交通法は、州によって違う」点についてです。
これは外務省のHPにて確認できました。

オーストラリア連邦には、連邦法と州法があります。
外務省の情報によると、

「9. 連邦の立法権限は,憲法により外交,防衛,貨幣,通貨等の特定の事項に限定されており,その他は州の権限。」

とあるため、日本でいう道路交通法は州の管轄となりそうです。

外務省 オーストラリア基礎データ
引用 “外務省 オーストラリア基礎データ ” 上記URLより
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/australia/data.html

ちなみに、連邦法が検索できるオーストラリア政府のサイト「 Federal Register of Legislation 」 で、
“alcohol” “transport” “driving” 等のキーワードで検索をかけてみましたが、有力な情報はヒットしませんでした。

では、タスマニア州での法律を確認します。
検索はタスマニア政府の法令検索サイト「 Tasmanian Legislation 」で行いました。

“alcohol” “driving” で検索をすると、
「 Road Safety (Alcohol and Drugs) Act 1970 」
という法律が見つかります。

日本語訳をすると「道路安全法」ですね。
“Version current” とあるため、現行法と思われます。

Road Safety (Alcohol and Drugs) Act 1970 冒頭
引用 Road Safety (Alcohol and Drugs) Act 1970 下記URLより
https://www.legislation.tas.gov.au/view/html/inforce/current/act-1970-077

さて、この法律を読んでいくと、

“Part II – Offences related to the taking of alcohol and drugs and the detection thereof” 内の、

“Division 1 – Driving under the influence of alcohol or drugs” 内に、こうあります。

“Driving while under the influence of alcohol, drugs, &c., prohibited”
(アルコールや薬物の影響下で運転することは禁じられている)

どうやら、飲酒状態での運転は、公道であるかに関わらず禁止されているようです。

Road Safety (Alcohol and Drugs) Act 1970 Division 1
引用 Road Safety (Alcohol and Drugs) Act 1970

さらに読み進めると、

“6.Driving with excessive concentration of breath or blood alcohol” (※1)では、

“1.Any person who drives a motor vehicle while alcohol is present in his or her breath or blood in a concentration greater than the prescribed concentration is guilty of an offence.”

( アルコールが規定濃度以上に呼気または血液内に存在しているときに自動車を運転すると罪になる)

とあります。

Road Safety (Alcohol and Drugs) Act 1970 6.Driving with excessive concentration of breath or blood alcohol
引用 Road Safety (Alcohol and Drugs) Act 1970

ここの規定濃度とは、
“PART I – Preliminary” 内にある “2.Interpretation” より、

prescribed concentration means a concentration of 0・05 of a gram of alcohol in 210 litres of breath or a concentration of 0・05 of a gram of alcohol in 100 millilitres of blood;”

(規定濃度とは、210リットルの呼気中に0.05グラムのアルコール濃度、または100ミリリットルの血液中に0.05グラムのアルコール濃度を意味する。)
と書かれてあります。

この呼気中アルコール濃度を日本のミリグラムに換算すると 約0.238mg/L、
血中アルコール濃度では0.5mg/mLとなります。

日本は呼気中アルコール濃度は 0.15mg/L以上、血中アルコール濃度は 0.3mg/mLから酒気帯び運転となるため、日本よりも少し規制が緩いと言えますね。

そして、基準濃度を越えると罰金、懲役、またはその両方が課されます。

“Division 3 – Supplementary provisions” 内の “17.Penalties for drink-driving offences, &c.” にある表の内、初犯のみを写真で抜粋しました。

Road Safety (Alcohol and Drugs) Act 1970 Division 3
引用 Road Safety (Alcohol and Drugs) Act 1970

オーストラリアでは、罰金は “penalty units”という単位制で、1単位180豪ドル(2019.06.30現在)となっています。

飲酒運転の罰金は2単位(360$ = 約3万円)から最大10単位(1800$ = 約15万円)となり、懲役は3ヶ月から最大12ヶ月です。

penalty units” については、連邦法の “Crimes Legislation Amendment (Penalty Unit) Act 2015″(日本語だと犯罪法)より計算しました。

Crimes Legislation Amendment (Penalty Unit) Act 2015 2 Subsection
引用 Crimes Legislation Amendment (Penalty Unit) Act 2015 下記URLより
https://www.legislation.gov.au/Details/C2015A00088

初犯の表内にある、0.05g以下でも処罰の対象となるものは、(※1)の画像内(2)以降に書かれてあり、仮免許や特殊な自動車を運転する人が対象なので、国際免許証を発行した一般の運転者には適応されません。

他にも詳しく知りたい方は、原文をご確認ください。
また、今回はタスマニア州での検索だったため、オーストラリアの他の州では法律が異なる場合があります。

さて最後に、オーストラリアでお酒を買うとラベルに書いてある、スタンダードドリンクについてです。

オーストラリア政府機関のNHMCR(国立健康医学研究カウンシル)によると、スタンダードドリンクとは、「1.0単位 = 純アルコール10g(12.5ml)」という意味だそうです。

NHMCR - alcohol
引用 NHMCR – alcohol 下記URLより
https://www.nhmrc.gov.au/health-advice/alcohol

スタンダードリンクを数えることで、たとえアルコール度数の違うお酒を飲んだ(チャンポンした)場合でも、どれくらいアルコール量を摂取したか計算できるようになっています。

例えば、お土産で買ったこのワイン。
このマークは、「このワイン1本飲むと7.7単位です」という意味です。

スタンダードドリンクのマーク
ワイングラス1杯あたりじゃないですよ! ボトル当たりです。

計算すると、

750ml×13.0% / 12.5ml = 7.8単位 となり、大体合っています。
小数点以下が異なるのは、純アルコールの比重計算を正しく行った際の誤差と思われます。

アサヒビールの AsahiHP によると、

「純アルコール20g(スタンダードドリンク2単位)(ビール中びん1本、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯)を飲んだときの血中アルコール濃度0.2mg/mL(0.02%)~0.4mg/mL(0.04%)に相当します」とあります。

飲酒運転の観点から見ると、スタンダードドリンク2単位が限界だと思われます。

Asahi 飲酒が運転に及ぼす影響
引用 Asahi 飲酒が運転に及ぼす影響 下記URLより
https://www.asahibeer.co.jp/csr/tekisei/drink_drive/effect.html

今回のワインだと、ワイングラスで1杯125ml(ボトル1本が6杯分とする)と仮定すると、2単位に抑えるには、1杯と少しまでとなります。

飲酒運転をしても、あくまで基準濃度までは罰則がありませんが、体験してみるとかなり危険です。
僕も走ってみて分かったのですが、オーストラリアでは時速100kmが普通で、中央分離帯も無いのにビュンビュン飛ばします。

この状況で飲酒してフワフワと運転していると、事故して死にます。
単純に、ちゃんと運転出来ない恐怖があるので、身の程をわきまえて行いましょう。

やっぱり、飲んだら乗るな、がリスクが無くて良いですよ。

おまけで、日本の法律も少し。

日本の法律では、「道路交通法 第65条」より、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」とあります。

しかし、「道路交通法施行令 第四十四条の三」 より

「身体に保有するアルコールの程度は、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムとする。(一部略)」

とあり、この基準を超えた場合が酒気帯び運転となって刑罰に問われます。

この基準濃度以下の場合は「ほろ酔い運転」となり、違法ではありますが刑罰はありません。
しかし、厳重注意を受け、人によっては社会的な信用を失うこともあると思います。

なにより、人身事故を起こす可能性が高まるので、やっぱり「飲んだら乗るな」は大切ですね。

皆さんも、お酒とは良いお付き合いを!