あらすじ
- 素っ裸で異世界に来た。
- 乗っていた船が難破したらしい。
- ハイエナに喰われて意識がなくなる。 ← 今ココ。
自宅を散策
目が覚めると、またも見知らぬ天井だった。
ハイエナに襲われてから記憶がないものの、どうやら助かったようだ。
ベッドを出て立ち上がる。体のこわばりが酷い。随分長い間寝ていたようだ。
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部屋には自分のものと思われる、仕事用のブーツと服が置いてあった。
身支度を整えると、少し気分も落ち着いてきた。
さて、ここは自分の家だと認識しているのだが、いかんせん記憶が無いのでよく分からない。
家族とかはいないのだろうか。
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階段を下りて他の部屋を覗くと、不気味な祭壇のような物があった。
頭蓋骨を並べるのが、ここの文化なのだろうか。
祭壇の前に、ちょっと物が入れられそうな袋が落ちていた。
リュックとして便利そうなので、ありがたく使わせてもらおう。
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階段の裏には物置があり、使っていない鍋や寝袋を持ち出して鞄に詰める。
ボロボロだけと頭巾もある。なんとなく被ってみるとしっくりきた。
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作業部屋にはジャーキーっぽい干し肉が転がっていた。
これ、食べられるのだろうか…。
きっと保存食だろうし、一応これも鞄にしまっておくことにした。
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地下のキッチンにはジャムが置いてあった。
海岸で拾った赤い実と同じ味がする。
手持ちのパンに塗って、タルティーヌにしておこう。
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さて、外に出る準備はできた。
どんな町が広がっているのだろうか。
ちょっとワクワクしながら、玄関の扉を開けた。
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「10秒以内に金を出さないなら、後悔させてやるわ!」
えっ、なんか家が武装集団に取り囲まれているんですけれど…。
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「部族への未払い金を支払いやがれ! 4ヶ月も滞納しやがって。金を払わないなら家ごと差し押さえるぞ!」
「10秒以内に金を出さないなら、後悔させてやるわ!」
えぇぇ…。
「記憶にございません」でなんとかならない、よなぁ。
つい先日まで素っ裸で海に流されていたのに、どうやって支払えっていうんだよ。
僕はなんとか期限を待ってもらうよう、お願いするしかなかった。
すると、身なりの良い女性が前に出た。
「いいでしょう。5日だけ待ちましょう。その時に支払えなければ、この家は差し押さえます。皆もそれでよろしいですね?」
彼女が鋭い声で言うと、武装した集団はしぶしぶながら、納得して帰っていった。
「しょーいち、彼らも家族を失って正気で考えていられないんだ。すまないね」
彼女は集団の背中をみながら、先ほどよりも穏やかに話しかけてきた。
この人なら、僕の背景を知っているかもしれないと思い、色々と聞いてみることにした。
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彼女は部族の顔役で、僕の親族の知り合いだった。
僕の祖先が部族に大罪を犯し、その罰金を子孫である僕が、ずっと払い続けているらしい。
そして先日、遠洋船で仕事に出た際、船が難破して乗組員と財産を海底に沈めてしまったようだった。
もちろん私財は失われ、航海中の罰金は未払いのままだ。
「5日間で銀貨150枚を返済することだね。」
彼女はそう言って、頑張りなさいと励ました。
しかし、僕にはまだ分からないことがある。
この世界の銀貨って、どれくらいの価値なのだろう。
とりあえず、家を出て町に行ってみることにした。
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町には能面を被ったヘンな人がいた。
どうやら武術に優れているらしく、基本的な戦い方を教えてくれた。
「スキルは有料だけど、ならっていくか?」
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武器に応じた技を教えてくれるらしい。
金額を聞くと、銀貨50枚だという。
手持ちの全財産は銀貨27枚。さすがに払えなかった。
次に食料品店に向かう。
魚やジャーキー、パンなども売っていた。
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さて、店主にパンの価格を聞くと、銀貨1枚だと言われた。
普通のパンだと仮定すると、日本円だと1斤あたり300円くらいだろうか。
借金が4か月で銀貨150枚ならば、1日あたりの返済額は銀貨1.25枚である。
ここで日本の生活保障制度に照らして考える。
例えば、僕が30代でここが都市部だったと仮定する。
都市部(1級地ー1)での生活扶助基準額の内、食費・衣料品などの第1類の金額は1月当たり42,020円である。(2021年1月2日現在)
仮に食費に50%使用するなら、1日当たりの食費は約700円である。
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https://www.mhlw.go.jp/content/000673423.pdf
つまり、ここでの通貨で換算すると、1日あたり銀貨約2.33枚となる。
借金の返済額を加えると、毎日銀貨3.58枚は稼がなければならない。
ちなみにハイエナ1匹を倒して得られる「皮」が、1枚あたり銀貨5枚。
つまり、ほぼ毎日命がけの戦いを続けなければならない生活を送っていたわけだ。
もし僕の現在の借金を日本円に換算したら、45000円程度となる。
うーん、物価も命も安い世界だなぁ。
武器屋にも寄ってみた。
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冒険するなら、ハイエナにも負けない武器が必要だと感じたからだ。
せめて攻撃から身を守る盾が欲しかった。
盾は銀貨20枚、ほぼ全財産だが、命には代えられなかった。
海岸に出ると、遭難していた時に会った人がいた。
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「よう。俺たちは金も時間も失ったな。命を失った船員達を想えば、不平を権利も無いのだろうが」
そういえば、なんで船が難破したのだろうか?
「灯台の光がついていなかったんだ。変だなと思ったときには座礁していた。船の半分が粉々になり、硬貨も、商品のスパイスも、武器も、そして甲板の下にいた乗組員の全員が失われた。」
それで僕も借金地獄になったと。
なんかもう悲惨だな。
彼に町の外に出て金を稼ぐのはどうかと聞いてみた。
賭けにでないと、この借金は返済できないのではないだろうか。
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「『脚を1本失って早死にする』の間違いじゃないか? 俺の義手も義足も「すべての経験は人を強くする」って言葉の愚かさを証明してるぜ」
そう、失ったものは戻ってこない。悲惨な目にあっても、現実はリセットなんてできない。
「自分で考えて生きろ。他人の道具にはなるなよ。じゃないと、俺みたいな手足になるからな。」
まぁ…良いさ。生きるだけでもお互い大変だ。アンタも頑張れよ。
そう言って、その場を後にしようとした。
「…実は、災害に備えた小さな隠し場所がある。南の古い難破船の近くにある。開ける時は『月が星を支配する』ことを忘れるなよ。助けてやれなくて、悪いな」
彼は良い人だった。その隠し場所を探してみることにしよう。
僕の中で指針が固まった。
まず、冒険に出る準備を整える。
そして、南に進んで隠し場所を探す。
借金は…、まぁ、なんとかなるだろう。
町では他にも、浄水施設に行って皮袋にきれいな水を汲んだり、
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町の公会堂に行ってみたりした。
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中には誰もいなかった。
奥まで進むと、賓客用のような部屋があり、貴族の服がチェストに入っていた。
着ている労働者の服よりも随分動きやすそうだ。
もう一度、誰もいないことを確認して、貴族の服と、ついでにステルスポーションと安定性ポーションとやらも頂いておく。
よく分からないが、いつか役に立つだろう。
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公会堂を出ると、すっかり夜になってしまった。
夜道に外に出るのは危険だろう。
冒険は明日から行くことにしよう。
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一日目は町の散策で終わってしまった。
しかし、やることは定まった。
明日から、冒険へと出発だ!
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